パネルシアターの専門店としては、世界で唯一の存在です。 材料の販売はもちろん、制作や実演に関する基本的な知識やアドバイスが満杯! さらに講習会の依頼もできます。
パネルシアターの仕掛け◆その作り方と演じ方     ホームはこちら

 パネルシアターは、お話や歌の進行に合わせて絵人形を貼っていくという、ただそれだけでも充分に楽しいものですが、場面に合わせて色々な仕掛けを取り入れることにより、更に楽しくて深みのあるものになります。
 ただし、余りにも仕掛けを多用したり、頼り過ぎたりするのは考えものです。
 最近は各地でパネルシアター講習会が開かれており、参加された経験のある方も多いと思いますが、まったくの初心者に限定した講習会でない限り、参加される方は二度、三度と参加される傾向があるようです。
 そうしますと講師をされる先生方としては、何度も参加している方を納得させるだけの講習内容にする必要にも迫られ、新しいアイデアや仕掛けを取り入れた作品が多くなりがちとなります。
 しかしこのページをご覧になっている方の多くは、保育やボランティアの現場で、主に子どもたちを観客としてパネルシアターをなさっているのではないでしょうか。
 そうであれば、あまり目新しさに囚われることなく、パネルシアターが本来持っている魅力を、いかに演じ、いかに表現するか、という点を忘れないでいただきたいという気がします。
 「おすすめ作品ガイド」にも紹介していますが、たとえば古宇田先生の作品『しゃぼん玉とばせ』などは、初めから終わりまで驚くような仕掛けは一切ありません。
 しかし絵人形を貼る前の出し方、貼り方、更に貼る位置や向きなどにより、ずいぶんと印象が変わってきますので、この作品一つだけをとっても、学ぶべき事柄は実にたくさんあります。
 以上のことを念頭においていただいた上で、これから仕掛けの色々についてご説明したいと思います。

  1.貼り合わせ(裏返し)
 絵を描いた面も描いていない面も、まったく同じように舞台にくっつくというパネルシアターの特性を生かして、瞬時に場面転換をしたりする時などに必要な、もっとも基本となる仕掛けです。
 Pペーパーは、下絵(型紙)を下に置いて簡単に写し取れることでも分かるように、とても裏写りしやすいので、表も裏もほとんど同じ絵でない限り、別々に描いて貼り合わせたほうが良いでしょう。
 「基礎知識のページ」でも触れましたが、厚手(厚口とか特厚とかLとも)は両面に絵を描く場合に使用する・・などと書いてある同業他社のパンフレットや、パネルシアターを取り上げている幾つかのサイトの説明は、はっきり申し上げて正しくありません。
 裏写りするという点では、厚手(厚口とか特厚とかLとも)も標準(薄口とかSとも)も、それほど大きくは変わりませんので、どちらのPペーパーを使う場合でも、別々に描いて貼り合わせたほうが良いでしょう。
 表と裏の絵柄がまったく違うような場合(例えば表が真赤なリンゴの絵で、裏がAppleという黒の文字という場合など)、どうしても裏写りが気になるようでしたら、貼り合わせる2枚の絵人形の間にコピー用紙などの白い普通紙を挟んで接着してみてください。
 仕掛けを作る際の貼り合わせには、糊ではなく木工用とかクラフト用などのボンドを使用してください。はみ出さないように薄く全面に伸ばし、重石になるものを載せて一晩置けばOKです。
 余談ですが、実際に手作りを楽しむようになると、ボンドで接着するという作業は、たいてい最後の仕上げに近いわけですから、この“一晩置いておくという楽しみ(子どもに返ったみたいです)”を、体感していただけるのではないかと思います。
 
 2.キャップ(袋貼り)
 「貼り合わせ」の応用形のひとつなのですが、帽子や、入れ物のキャップなどを表現するとき、とても効果的な仕掛けです。両面をベッタリ全部貼り合わせないで、あとでご紹介する「ポケット」と同じように端だけを接着して袋状にすることで、帽子を被せたり取ったり、バッグなどから物を取り出したりするような演出ができるのです。
 ただし、絵人形を裏返したり手に持ったまま演じたりするのでなければ、この仕掛けは特に必要ありません。帽子なら普通に表だけを描き、頭の上部に重ねて貼るだけ(裏打ちが必要な場合もある)ですし、バッグなどに物を入れたり出したりするような場合でも、裏返すことがないのであれば「ポケット」の仕掛けで大丈夫だからです。
 裏返して見せたり、パネル面からはずして手に持ったりすることで仕掛けの存在を分かりづらくできますので、「引っ張り」などと併用して、まるで手品のように見せることも可能です。
 
 3.重ね貼り(裏打ち)
 これも「基礎知識のページ」で触れましたので、一部内容が重複する点はご了承ください。
 Pペーパー同士は原則的にくっつきませんので、絵人形の上に絵人形を重ねて貼る場合には、上になるほうの絵人形の裏にパネル布を貼っておく必要があります。そうすることにより、何枚もの絵人形を「重ね貼り」することもできるようになります。
 この、絵人形の裏にパネル布を貼る作業のことを、「裏打ち」と呼ぶわけです。「貼り合わせ」の時と同様、木工用などのボンドを使ってください。必ずしも裏面全体に貼る必要はありませんが、バランス良く貼ることが大切で、特に絵人形の上部のほうは、できるだけギリギリまで貼ったほうが良いでしょう。
 洋服だけを描いた絵人形に「裏打ち」をしておけば、着せ替えをさせるというようなことも、ごく簡単にできます。
 上に重ねて貼る絵人形のほうがうんと大きかったり、横長の絵人形の上に縦長の絵人形をクロスするような形に貼るような場合など、「重ね貼り」するほうの絵人形に、パネル面に直接密着する部分がある程度あれば「裏打ち」をする必要はありません。詳しくは、画像説明を見てください。
 なお、下になる絵人形が一部でも見えるような「重ね貼り」の場合は、上に貼る絵人形の余白は残さないほうが、より自然な感じに見えると思います。

  4.切り込み
 口に歯ブラシとかキャンディなどをくわえる、ポケットに物を入れる、器や鍋などに物を入れる(盛る)・・といったような場面に使います。その名の通り、絵人形の一部をカッターなどで切り、そこに別の絵人形の一部または全部を差し込むという仕掛けです。
 裏にパネル布をパッチポケットのように貼ることもあり、次にご説明する「ポケット」の仕掛けとも近いのですが、絵人形の一部に切り込みを入れる仕掛けは「切り込み」、切り込みを入れないで、絵人形の上端とか横から裏側に別の絵人形を隠すようにする仕掛けは「ポケット」、というように分けて考えていただければと思います。
 どうしても平面的に見えてしまう絵人形に、「切り込み」の仕掛けを作って別の絵人形の一部を差し込むだけで、グッと立体感を出したりできますので、応用しだいで表現の幅をかなり広げることができます。
 別の絵人形を(見えなくなるまで)全部差し込み、またあとで取り出したりするような演出のときは、裏にパネル布かPペーパー、場合によっては普通紙をパッチポケット状に貼っておいたほうが、スムーズに取り出しやすいかもしれません(次項でご説明する「裏ポケット」になります)。
 前項の「重ね貼り」の場合と同じですが、絵人形の一部だけを差し込み、下になる絵人形と重なって見える場合は、差し込むほうの絵人形の余白は残さないほうが良いような気がします。

 5.ポケット
 上記の「切り込み」の画像説明のページでご説明したように、「ポケット」には大きく分けて二つの種類があります。
 .絵人形の表に本当のパッチポケットのようにPペーパーを貼り付ける場合
 .絵人形の裏にPペーパーやパネル布をパッチポケット状に貼る場合
 Aのような「ポケット」を仮に「表ポケット」と呼びますが、この「表ポケット」を使えるのは、当然ながら「ポケット」が付いていても不自然ではない絵人形であることが条件となります。つまり洋服の胸ポケットやバッグの外ポケットのように、貼り付けた部分が輪郭線と重なる場合に限られるということです。しかも貼り付けたポケットの上に身体の他の部分が重なっていない絵であることも条件で、そうなると実際に使用する場面は少ないでしょう。
 それに対して、仮に「裏ポケット」と呼ぶBタイプの「ポケット」は、絵人形の裏に作るものですから、絵人形の表がどんな絵でも関係ありません。ですから、こちらの「裏ポケット」のほうが、はるかに使用頻度が高いと思います。
 花や草むらに作った「裏ポケット」の中に、あらかじめ蝶などを数枚隠しておき、全部重ねて取り出して「ずらし貼り」(次に説明します)をしていくテクニックや、「引っ張り」(こちらも次に出てきます)の仕掛けを併用したりして、何羽もの蝶々が舞っているように貼っていく・・この程度のことは、比較的簡単にできるようになると思います。
 「ポケット」には当然何枚かの絵人形を入れることができますから、例えばあらかじめ犬の絵人形を隠しておき、観客の前で猫を入れ、取り出す時に犬に替えて出すというように、まるでマジックみたいに見せることもできます。

  6.糸止め
 上半身と下半身、身体と手や頭や尻尾など、色々な動きをする絵人形は、表現の幅をうんと広げてくれます。必要なのは、普通の縫い針と白の木綿糸(化繊の糸でも問題なし)だけです。
 動きの支点となる部分を決めて、例えば身体と尻尾なら身体の上に尻尾の部分を重ね、裁縫と同様に、針と糸で表側から裏側へ糸を通し、そのまま緩まないように玉止めして、目立たないように周りと同じ色を着ければ完成です。反対に裏から表へ針を通しても問題ありませんが、表から通したほうがより正確な位置に止められます。
 強度に不安があるようなら、糸を二重にしても良いですね。玉止めが抜けてしまうのが心配なら、裏側にセロテープを貼るか、玉の部分にマニキュアなどを少し塗っておくと、かなりの補強になります。
 「糸止め」の仕掛けをすることで、パネル面に貼ってない状態、つまり絵人形を手に持ったままの状態でも、ブラブラとする動きを見せることができます。しかし、だからといって、何でも「糸止め」してしまうのは考えものです。パネル面に貼った状態で動きを出すだけなら、あえて「糸止め」しないでおくほうが、かえって面白いこともあるからです。
 「糸止め」をするということは、当然支点を一ヶ所に固定するわけですから、その動きには制約があります。ところが、例えば顔と身体を別々の絵人形として使うことにより、思いもかけないような表情を出せる場合があるのです。
 このことは、パネルシアターの表現方法についての知識として、かなり重要なことではないかと思います。ぜひ頭の片隅に入れておいてください。画像説明のページでも詳しく説明しました。
「糸止め」の応用型として、古宇田先生が考案された傑作仕掛けの代表とも言える、『ポンポンポケット』のライオンさんと『大きな大根』での大根についても、画像説明のページで詳しく触れています。
 
 7.引っ張り(糸引き)
 この仕掛けは、その名の通り、絵人形に玉止めしておいた糸を引っ張って、絵人形を動かすものです。
 白い糸を縫い付けた絵人形をパネル面に貼る時に、観客に分からないよう、糸の端をパネルボードの裏側へ垂らしておき、それを場面に合わせて引っ張ると、太陽が昇ったりロケットや蝶々が飛んだりするのです。
 この仕掛けは、枠で囲ったようなパネルボードでは使えません。「基礎知識のページ」の2ページ目「パネル布とパネルボード」のところでもご説明していますが、額縁ボード(枠で囲ったようなパネルボードのことを、私どもはこう呼んでいます)では、茶や黒の枠の部分に白い糸がクッキリと映えて(笑)、せっかくの仕掛けが台無しになってしまうのです。
 毛糸(パネル面によくくっつきます)を貼ってロープを表現し、それに引っ掛けたロープウェーが動くというようなことも簡単にできますし、他にも色々応用できると思います。
 ちなみに毛糸は、何色か用意しておくと便利に使えます。水面や地面を表現したり、物干しロープや橋などにも使えたり、とても応用範囲の広い小道具です。

 8.ずらし貼り(スライド、重ねずらし)
 これは、仕掛けと言うよりテクニックと呼ぶべきものですね。例えば「パ・ネ・ル・シ・ア・タ・ー」の文字を一字ずつ描いた7枚の絵人形をひとつに重ねて持ち、指先で調節しながらパネル面に広げていくというものです。
 蝶々やトンボなどの絵人形を何枚も広げても良いですし、ご自分の名前や劇団名などを描き、自己紹介に使ったりもできますので、ぜひ身に付けておいてください。少し練習すれば、どなたでも簡単にできるようになると思います。
 
 9.窓開き
 Pペーパーは“布のような性質を持つ固めの紙”といった感じのものですので、きっちりとした折り目を付けることが難しく、ドアとか窓などが開いてその中を見せるというような場合には、切り取って貼り合わせるようにします。
 例えば両開きの窓を開いて中に誰かがいるのを見せるというような場合でしたら、窓の開く部分だけの絵人形を別に作り、ガーゼなどを蝶番(ちょうつがい)のように使って接着するのです。もちろん、元になる絵人形の窓の部分には、窓を開いた状態の絵を描いておきます。
 蝶番には、ガーゼ以外でも、例えば着古しのカッターシャツなどの、白っぽくて薄い布切れなら何でも使えます。ガーゼは目が粗くて繊維がほつれやすいですから、ボンドでの接着には少し注意が必要で、場合によってはガーゼの上に、もう一枚Pペーパーを貼る必要が出てきたりします。
 しかし着古しのカッターシャツなどの、薄い生地を使えば、そのような心配はまったくありませんから、とてもお薦めだと思います。ガーゼより丈夫で繊維の伸びも少ないですし、もちろんPペーパーと同じように着色もできます。
 元になる絵人形の窓のところは、開かないほうの部分、つまり蝶番を取り付ける側に切り込みを入れ、窓だけの絵人形に蝶番のように布切れを貼ったものを表から布切れだけを差し込み、それを元の絵人形の裏にボンドで貼り付ければ、仕掛けとしては完成です。あとは回りと同じ色を塗れば、ほとんど目立ちません。
 「窓開き」の仕掛けは、他にも様々な場面に応用できます。身体の部分はそのままで顔だけ表情を変える・・、その部分だけをアップにして面白く見せる・・、違う大きさの絵を描いて遠近感を出す・・等々、工夫しだいで様々な場面に応用できると思います。
 仕掛けの呼び名は「窓開き」なのですが、だからといって使用する範囲を窓やドアに固定して考えないでいただければ、きっと面白いアイデアが浮かんでくるでしょう。
 
 10.引き伸ばし
 木が大きく伸びたり、動物の尻尾やお化けの舌が伸びたりするような表現をしたい時に使うのですが、引き伸ばすほうの絵人形、例えば尻尾なら、一番引き伸ばした状態のところで引っ掛かって止まるように、糸をストッパーとして身体のほうの絵人形の裏に縫い付けておくというものです。
 しかし、裏返さない絵人形に、そのような手の込んだ仕掛けを作る必要はないと思いますし、「貼り合わせ」をして裏返しをする絵人形に取り付ければ、引っ掛かって止まるような仕掛けにすると、トラブルになった時に簡単に直せなくなってしまいます。
 身体の絵人形を貼る時に重ねて貼るわけですから、身体と尻尾、顔と舌とは別々の絵人形のままで、特別に手の込んだ仕掛けを作らなくても、ほとんどの場合はまったく問題ありません。ですからあえて仕掛けとして分類する必要はないと思います。
 
 11.引き抜き
 この仕掛けは、ブラックパネルシアターの時はとても効果的に見せられるのですが、普通の白パネルの場合には、それほど効果的な使用方法は思い当たりません。
 描いてある絵や文字などを別のPペーパーで隠しておき、徐々に引き抜いて見せるというものですが、隠してあることが分かるようでは面白みに欠けると思いますから、白パネルでは、使いづらいような気がします。いや、何か仕掛けがしてあるのが見えたとしても、それなりに楽しめるとは思うのですが、白パネルの場合は「窓開き」など、他の仕掛けを工夫して使ったほうが、より面白そうな気がします。
 ブラックパネルシアターの場合は、当然仕掛けの存在は分からないわけですし、徐々に見えてくる文字や絵が蛍光で輝いているのですから、素晴らしい効果を生む仕掛けのひとつとして、大いに活用していただければと思います。

 12.蓄光塗料(蓄光シールなど)による残光効果
 ご存知ない方のために、「蓄光塗料」について簡単にご説明しておきましょう。
 名前からも分かるように、自然光や電灯の光でもブラックライトの光でも良いのですが、ある程度の時間照らされることにより、その光を蓄えて、光源がなくなって真っ暗になった後も、しばらくの間は自ら光を放つことができるというもので、蛍光塗料とは違います。
 蛍光塗料は、事故防止のために自転車の後ろなどに貼ったりするシールもあり、比較的知られていると思いますが、それだと単なる蛍光ですから、蛍光ポスターカラーを塗るのと同じことです。
 つまり蛍光は光源がないと光りませんが、蓄光は光源がなくなった後もしばらくの間は光り続けるのです。時計の文字盤や針、魚釣りのウキなどには、夜光塗料という名前で以前から使われています。
 ブラックライトに照らされて光り輝くように美しい絵人形が、ブラックライトを消した瞬間に見えなくなってしまうのに対し、その瞬間から「蓄光塗料」だけが光り続けるわけですから、花火やお花畑などの中に子どもたちが喜ぶような形のものを描いて埋め込んでおけば、とても素晴らしい効果を生むことができます。
 この演出を効果的に使うためには、ブラックライトを瞬時に消す必要がありますので、だからこそブラックライトには手許スイッチが必要となるわけです。
 以前から使われている「蓄光シール」は色数がなく、使い勝手も良くなかったのですが、最近はマニキュアタイプの使いやすい蓄光性夜光塗料が手に入るようになりました。
 蓄光シールとして売っているものより光度も少し強めで、色も数種類ありますから、使用頻度の高い方には特にお薦めです。
 つまり普通の蛍光ポスターカラーなどと同様に、直接Pペーパーに描けば良いわけで、シールとは比較にならないほど使いやすく、また応用範囲も格段に広がると思います。
 
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