ブラックパネルシアター★特徴・作り方・おすすめ作品 ホームはこちら
パネルシアターには、普通の白い舞台を使って明るい場所で演じる「白パネル」の他に、暗い場所で、蛍光の画材で作った絵人形と
ブラックライトを使って演じる「黒パネル(ブラックパネル)」、更に投影機を使って影絵的な効果を取り入れた「総合パネル(透視パネル、影絵パネル)」があります。
「黒パネル」「総合パネル」とも、「白パネル」に続いて古宇田先生によって考案されました。どちらも既に40年ほどの歴史を持っています。
「総合パネル」は、舞台装置が大掛かりになることもあり、制作や上演の労苦に見合うような効果が得られにくいイメージもあって、上演される機会は多くありません。
しかし「黒パネル(ブラックパネル)」は、今ではすっかりポピュラーなものになりました。
ここでは、その「黒パネル」を採り上げて、特徴や制作上の注意点、お薦めの作品などについて、まったく初めての方にも分かりやすいように解説してみたいと思います。
1.ブラックパネルシアターの特徴
まず最初に、その呼び名について触れておかなければなりません。
「
パネルシアターの作り方と基礎知識」の3ページ目にも書いた通り、「パネルシアター」の一技法なのですから、必ず「パネル」という言葉を入れて呼んでいただきたいのです。「どうでも良いじゃないか・・」っていう声が聞こえてきそうなのですが、実は「パネル」という言葉が入っていないと、パネルシアターとは、まったく違うものを意味してしまうからです。
ヨーロッパなどでは結構ポピュラーみたいですが、「ブラックライトシアター」「ブラックシアター」と呼ばれる舞台芸術の分野が、既に確立されているのです。
ですから必ず「パネル」という言葉を入れて、「ブラックパネル(黒パネル)」、「ブラックパネルシアター」、「ブラックライトパネルシアター」というふうに呼んでください。「ブラックライトシアター」「ブラックシアター」という呼び方はやめましょう。「パネルシアター」を略して「シアター」だけでは、何のことか分からないのと同じです。もちろん「パネルシアター」を前提にした会話や文章の中では、「ブラック」とか「黒」とかだけで構いませんけどね。
ちょっと乱暴ですが、ブラックパネルシアターの特徴を一言で表すとしたら、“きれい”とか“美しい”ということになると思います。
普通の「白パネル」の特徴を一言で表すと、おそらく“楽しい”とか“遊ぶ”といった感じになるのに対して、「黒(ブラック)」は、より芸術性に重きを置いたもの・・と言えるでしょう。
古宇田先生の作品『
あれは何者だ』(「
ことばあそび・うたあそびパネルシアター」収録)や、関先生の作品『おばけちゃん』(「
またまたパネルシアターであそぼ」収録)のように、観客に問いかけながら進めていく“参加型”の作品、また『
おもちゃのチャチャチャ』(「
パネルシアターを作る 2」収録)のように、手拍子で参加してもらったりする作品もありますが、ブラック作品の多くは、幻想的な美しさを見て楽しんでもらう“観賞型”の作品です。
暗いところで演じるのですから、鑑賞型作品が多くなるのは当然とも言えますが、そうなりますと演者の技量や作品構成の優劣だけでなく、絵人形の“美しさ”も、とても大切な要素になります。
白パネルの場合は絵人形の出来よりも、どちらかと言えば “いかに演じるか”ということのほうに軸足があるのに対し、ブラックの場合は構成面の完成度や、絵人形の出来・不出来にかかる比重が、うんと大きいと言えるでしょう。
2.ブラックパネルシアターの制作
制作については、「
パネルシアターの基礎知識と作り方」の3ページ目でも一部触れていますので、そちらを読んでいただいた方には、重複する部分もある点をご了承ください。
白パネルとの最大の違いは、当たり前のことですが絵人形の着色には、すべて蛍光ポスターカラーなど、蛍光の画材を使用するということです。
そして白パネルでは“余白”に当たる部分を、すべて真っ黒に塗りつぶしてしまう必要があります。つまり、“余白”ではなくて“余黒”にするということです。白のPペーパーには、蛍光性を持った原料が含まれているため、ブラックライトにはっきりと反応します。ですから絵人形の外周、すなわち切断面も残らず黒く塗ることを忘れないでください。
絵人形の切り方や作品によっては、この“余黒”にする部分の面積が結構大きくなることも考えられます。少しだけでしたら、輪郭線と同じように油性の黒マジックでも構わないと思いますが、一番真っ黒になるのは、黒のポスターカラーです。コストと使いやすさの両面から墨汁もお薦めなのですが、完全に真っ黒にしようと思いますと、二度塗りをする必要があるかもしれません。
たいていの絵人形は白パネルと同様、白Pペーパーで作ります。黒Pペーパーを使えば、“余黒”にする手間が不要になりますので、最初から黒Pペーパーを使えば良いように思うのですが、黒Pペーパーには、薄くて扱い辛い、蛍光カラーの色ノリ(発色)が悪い、コスト的にも割高になる、などの欠点があります。
更に問題なのは、下絵(型紙)の上にPペーパーを載せて、簡単に写し取ることができないということです。下絵(型紙)を横に置いて、それを見ながら色鉛筆などを使ってフリーハンドで下絵を描ければ良いのですが、「それは、ちょっと・・」という方が多いのではないでしょうか。
(この部分は、絵心のある方は無視してくださいね)
この問題を解決するためには、赤など、黒の上に書いても見えるカーボン紙が必要になります。下絵と黒Pペーパーの間に赤カーボン紙を挟み、下絵の上から鉄筆やボールペン(書けなくなったもののほうが良い)などで強めになぞれば、下絵イラストを黒Pペーパーに写し取ることができます。
(通常とは逆に、下絵が上で黒Pペーパーが下になるわけです)
これで下絵を写し取る問題だけは解決しますが、やはり着色部分が多い絵人形は白Pペーパーで作るほうが良いでしょう。薄くて扱い辛いことやコストの問題には目をつぶるとしても、色ノリ(発色)の悪さは致命的な欠点となるからです。ブラックパネルは、美しくあることが大切なポイントなのですから・・。
そのため黒Pペーパーの使用は、着色部分が非常に少ない、例えば星空のような絵人形の場合などに限定したほうが良いと思います。
その場合も、着色部分だけは白Pペーパーで作り、それを黒Pペーパーにボンドで貼り付けるようにしたほうが、はるかに美しく発色するでしょう。
ブラックパネルの絵人形を作る上で、もう一つの問題は色の変化です。昼間とか、普通の明かりのもとでの色と、ブラックライトを点けて見る色とでは、随分違った色になってしまうことがあるのです。
蛍光ポスターカラー(など)を単色で使用する場合はほとんど問題ありませんが、混色する場合は要注意です。ですから時々ブラックライトを点けて、色を確認しながら着色作業をしたほうが良いと思います。
私どもがお薦めしている
ターナーの蛍光ポスターカラーには、他社ではあまり見られない“蛍光ホワイト”が入っています。以前から「白を出すのが難しい」と言われているのですが、この蛍光ホワイトを使えば簡単です。そのままですと水色のような感じに見えますから、ほんの少しだけ蛍光オレンジを混ぜます。
メーカーさんに聞きますと「1%程度」ということですが、普通の明かりのもとで見て、“わずかにオレンジが混ざっているのが分かる程度”を目安にしてください。
それと、蛍光ホワイトがあることで混色がうんと楽になり、カラーのバリエーションも飛躍的に増えます。
これも以前から言われていることなのですが、「3色以上混ぜ合わせると発色が悪くなる(光らなくなる)」というようなことはありません。他のメーカーでは試しておりませんので分かりませんが、ターナーのポスターカラー同士でしたら、3色4色と混ぜても、蛍光性能が落ちることはありません。
3.ブラックライトについてのお話
ここで「ブラックパネルシアター」に不可欠な
ブラックライトについて、少しだけ打ち明け話(?)をさせてください。
一番広く出回っているブラックライト(イーゼル吊り下げタイプ)についてなのですが、「ブラックパネルシアター専用」と言って胸を張るのには、少々抵抗があることをここで告白させていただきます。
だって、ブラックライトを使って演じるのにライトの器具(フード)は白い・・って、どう考えても変でしょう?
いや、別に白いから駄目というわけではないのですが、普通に考えれば黒以外あり得ないでしょう?
ブラックパネルを演じるのに、わざわざ白っぽい服を着る人はいないでしょう?
それは、黒い遮光フードの付いた蛍光灯器具がなかったからなのです。ですから既製の、本来の用途である明るくするための家庭用蛍光灯器具に、蛍光管だけブラックライト管を付けたのです。
ブラックライトを最初に発売する時点で、短期間に何百とか何千とかの需要が見込まれれば、資本力のある大手の業者さんなら、黒い塗装をした器具を特注して、「ブラックパネル専用」として販売できたかもしれませんけど・・。
『しかしお前のところは、それを売っているじゃないか』とのお叱りが聞こえてきますが、これは商品の悪口を言っているわけではないのです。そういう事情も知っておいていただければ・・との思いで、正直に実情をお話ししているのです。更に価格面においても、とても適正価格とは申し上げられないレベルの価格設定となっています(これは「パネルシアター専用イーゼル」についても同様です)。
ですから、一応私どもも取扱商品の一部に加えてはおりましたが、自信を持ってお薦めできるような商品ではないことも、ここで告知させていただきたいと思います。
ですが10年ほど前に、真っ黒(!)に塗装されたブラックライト(Bタイプ)を商品に加えることができました。
この商品は、遮光フードの内側(ライトの光が当たる側)は鏡状になっており、照射力を強くする工夫がなされています。
蛍光管が10Wのものしかなく、効果の面を心配したのですが、何度かのテストを繰り返した結果、20Wの従来商品と比較しても、ほとんど遜色がありませんでした。しかも、とてもお求めやすい価格で提供することができ、これこそは私どもの最大の喜びです。
大きな舞台を使われる場合には、本数を増やして対応していただけます。ちなみに10Wのブラックライトを2本セットすれば、20W1本より広い範囲を照らせますから、横長のワイドなパネルボードでも、より効果的です。
さらに、
蓄光塗料などを使用した演出に不可欠な、手許スイッチが付いていなかったのですが、節電用として作られたタップ(豆ランプ付スイッチ式のコンセント)をセットにしてお付けすることで、従来商品の手許スイッチ以上に使い勝手が良くなりました。
そしてこのたび、ついに決定版とも言える
ブラックライト(スタンドタイプ)を商品に加えることができました。
学習机などで使う、卓上スタンドの形になったブラックライトです。上記のBタイプと同様、遮光フードの内側は照射力を高めるよう、鏡状に仕上げてあります。
27Wという強力な照射力はパネルボード全体をカバーしますので、端のほうに貼った絵人形も、従来商品と比較したら、うんと鮮やかに光り輝くようになりました。
特長としては、小型・軽量で持ち運びが便利であること、設置がとても簡単であることですが、何よりも嬉しいのは、イーゼルの呪縛(?笑)から切り離されたことです。
つまり、どんなイーゼルであっても、またイーゼルなどがなくても、まったく関係なく使用できるということなのです。
本体にはもちろんスイッチが付いていますが、
蓄光塗料などを使用した演出にも対応しやすいように、節電用として作られたタップ(上記と同じものです)をセットにしてお付けしますので、豆ランプの付いた手許スイッチとして、とても便利にご使用いただけると思います。
4.おすすめのブラックパネルシアター作品
前にも書いた通り、ブラックには参加型の作品は多くありません。小さい子どもさんの場合など、暗くなると怖がったりする子もいますから、ブラックを2作品以上演じるのであれば、最初に参加型の作品を持ってきて、恐怖感や緊張をほぐすようにすると良いでしょう。
そこで参加型の代表的作品として『
あれは何者だ』(「
ことばあそび・うたあそびパネルシアター」収録)をお薦めしたいと思います。歌に合わせて進めていきますので、演じるのが比較的容易ですし、舞台のセッティングなどによる待ち時間で間延びしそうになったとしても、すぐにペースを取り戻しやすいでしょう。
この作品は、気持ちの上では白パネルの延長のつもりで演じるようにすると良いですね。
また『
おもちゃのチャチャチャ』(「
パネルシアターを作る 2」収録)もお薦めです。たいていの方がご存知の歌ですから、“チャチャチャ”の手拍子に参加してもらうようにすることで、“半”参加型の作品となります。
鑑賞型の作品については、お薦め作品を絞るのが難しくて悩ましいところですが、ここではクリスマスや七夕(たなばた)などの季節行事に関するもの、そして花火や星やお化けなど、ブラックの定番的なものは除いて考えてみましょう。
お話を聞いてもらうタイプの作品としては、『
月へのぼったうさぎ』(「
ブラックパネルシアター」収録)、『金のおの銀のおの』(「
せいさくパネルシアター」収録)、『
くもの糸』『花の木村と盗人たち』(いずれも「
パネルシアターくもの糸」収録)などはどうでしょうか。
『
月へのぼったうさぎ』は仏教説話、『金のおの銀のおの』はイソップ寓話からのお話ですし、『
くもの糸』は芥川龍之介の名作、そして『花の木村と盗人たち』は新美南吉原作の名作童話です。
ブラックパネルの特徴として、より芸術性に重きを置いたものということを申しましたが、そのことは同時に、よりメッセージ性が強いということなのですから、ぜひその点を生かせるような作品を選んでいただければと思います。
小社では、ご希望の方にパネル布のハギレを差し上げています。「白」だけでなく、「黒」もあります。
ご注文メールに、「白パネル布ハギレ希望」なり「黒希望」なり、一言書き添えてください。